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お前も親になれば

子供の頃、「お前も親になれば判るだろう」とよく言われてきた。そんな ものは無いと信じて来たが、実際に親になってみて初めて見えてくるもの は存在した。父の話してくれた事と同じかどうかは判らない。しかし、こ の子の未来に関することではある。悠澄を見ていて、この子をこう育てた い、あれもやらせてみたいと色々な事が頭をよぎって行く。しかし、私は 父の希望を尽く壊しながら育ってきたと思う。この子もきっとそうするの だろう。楽しみだ。ただ出来るなら、大人になって行くことを高ぶること なく意識しながら大きくなって欲しい。これから、「家族」として様々な 新しい事に出会うだろう。それぞれがどんな対処をして行けるか、悠澄と ともに学んで行きたい。

子供をつくる事に躊躇している友人夫婦に聞いたことがある、「子供が生 まれて幸福な時代かを疑問に感じる」と。この子が御腹に居る間に、湾岸 戦争は終結を迎え、何が「正義」かの議論が湧き起こる。ソ連では湾岸調 停のために外交官が奔走し、自らの共和国の独立問題と経済破綻に苦しみ ながらクーデターとその失敗を経験した。日本では、大戦の責任を明確に せずに平和維持軍の問題が論じられ、支持率65%の海部内閣が自民党内だ けの議論で倒れようとしている。そして、南ア共和国では、永年のアパル トヘイト政策に終止符が打たれる。人類は、未だ何処に行くのか見えてこ ない。悠澄の時代にはもう少し人類が賢くあって欲しい。この子のおかげ で、何かをしなければならないと思い始めてきた。