Webサイトは、情報の集積地である。様々なニーズに対応できるように様々な角度から情報アクセスの経路を考えて設計される。サイト設計をする際の醍醐味は、通常は絡み合いこんがらがっている情報をほぐし、対象とするユーザがアクセスしやすいように「道」を作っていく点にあるように感じる。そして、その道を喜んで多くの人たちが通って行ってくれた時、構築者冥利に尽きる喜びに浸れる。
ところが、その整理された情報経路を設計する段階の情報はどうなっているだろうか。紙で描かれた構造図、エクセルで書かれた管理表や各種一覧表、描画ツールで描かれたサイトマップ、コンテンツの詳細情報ドキュメント...。まさに山ほどの情報に囲まれて、構築作業を進めているのが本当のところではないだろうか、いずこも。
サイトの構築の案件が目の前に出されたとき、その瞬間から頭の中にはアイデアが溢れ出す、あれもやりたい、これもやりたい、これは面白いに違いない、それは凄いぞ...エンドユーザの反応を夢想するかのようにアイデアがでる。或いは、アイデアと呼べない漠然としたものであっても、常に頭の中の大半がそんなモノで占められる感覚に陥る。そして、それを形にしようとした途端に、情報整理や記録の難しさという壁にぶち当たる。
紙で殴り描きした構想を、イラストレータで清書する。清書しながら、検証も行えるが、定型の描画モードに入ると、描いている端から、頭の片隅でアイデアがプチプチと壊れていく音がする。ファイルシステムからファイル名をコピー&ペーストしている時などは、最早イライラさえしてくる。思ったことを早く実装したい。しかし、自分が描いた図面を使ってチームで話し合っていると、自分の描画力/説得力のなさから伝わって欲しいものが欠落しているのを感じて、落ち込んでしまう。気持ちが萎えると、満ちていたアイデア袋に穴が開き、大切な何かが落ちていく。
エンジニアの友人が先日ボソッと言った、「エンジニアって一番ITの恩恵を受けてないんだよね」。未だにプログラミングは、紙と鉛筆があればできると言われている。Webに関わる全ての人もそんな思いを抱いているんじゃないだろうか。そう、Web構築だって、紙と鉛筆があればできる。
けれど、そうじゃない世界もあってよい。自分の描いたアイデアをできるだけ迅速にディジタルの世界に投入でき、既にある様々な使い慣れた有効なツール達に手作業変換をすることなく手渡せて加工し、更に重要な情報を入手する。蓄積された情報をシェアしつつ、新しいアイデアを積み上げていく。そんな環境が在ってもいいじゃないか。
約2年前、そんな思いに駆られたのが、この「Ridual」が頭に降ってきた瞬間だった。サイト構造の階層構造が、XMLの構造と似ていると思った瞬間でもある。サイトの構造をできる限りシンプルに表現していき、そのシンプルな状態で反芻する、検証する、シュミレーションする。
この手法が如何ほど有効かは未だ見えない。しかし、何人かに使ってもらって、楽しくページ配置をしたという感想を聞いたとき、なんだか行けるかもしれないという感触を得た。まだまだ、GUIもこなれていないし、使い勝手も悩むものかもしれないが、少し世の荒波にもまれてみたい、ニーズを聞かせて欲しい....そんな想いからサイト立上げに至りました。裏話や描いている活用方法等を交えて、少し書かせて頂きます。お付き合い願えれば幸いです。
以上。/mitsui