Webサイト開発を行う場合、直接的にページやリソースに関係する作業ばかりが必要なのではない。どんな仕事でも同じだろうが、情報共有の部分が大きな割合を占めている。
Ridualはサイト開発に直接関係する部分を狙っているが、その出力であるPIP(Project Information Portal)だけが少し性格を異にする。作りこんだページ等を見やすくするだけでなく、解析結果や関連ドキュメントへのアクセスを助けることを目的にしている。一種のサイトレポートという意味も持っているが、やはり少し変り種である。
Winユーザであるならexplorer越しなどでファイルの共有を確保している方々も多いだろうが、基本的な考えとして、「全ての情報にブラウザでアクセスしたい」と考えている。サイトを開発するのはサイト越しにできるだろう、と考えている。また、編集可能な形でアクセスしてくださいと置いておくのにも抵抗があるというのが本心でもある。情報共有システム内に「本体」が置いてあり、参照のためにダウンロードし、ローカルにあるモノは捨てても構わないテンポラリーのモノである、と。勿論、mailでワードファイルを送りつけるのも、気持ちが悪い。送るべき情報は何処にあるかのポインタ情報のみであるべきだ。他人のメールフォルダをイビツに広がさせたくはないし、させられるのも嫌だからだ。
そんなポリシーを形にしてみたのが、PIPである。しかし、実際に使おうとした場合、恐らく誰もが中途半端な感じを持つだろう。大切な情報がこの"ポータル"には入っていない。
情報共有を行うべき情報には幾つかの種類がある。
1)仕上げていくこと自体に価値がある情報(納品物)
2)日々変動するが、数値的にサマリーとして得たい情報(進捗情報)
3)要約的情報(議事録)
4)対話型情報(会話情報)
5)...等
RidualのPIPが箱として機能するのは、精々3)まで。対話型の情報は入れられなくはないが相当の労力が必要だ。そこで考えていたのが、プロジェクト単位にデータベース(DB)を置き、同時に串刺して検索も出来るモノ。しかも、大きなSIerだけでなく、SOHOでも導入可能なもの。
DBの中に置くものは、量的に多いものはmailである。即ち、プロジェクトが立ち上がった時点で、mailアカウントが1つ作られる(メーリングリストでも良い)。特にクライアントとの情報交換には必ずそのメールアドレスを加える。備忘録的な情報を入手したときも自分に送るだけでなく、そこにも送る。送られたmailは、そのままPOP3経由でDBに格納される。
これが出来たら、いつまでもメールの中を掃除できない状況から脱することができる。私だけでなく、メーラがDBになっている方は多いはずだ。何か情報検索をする必要が出ると、メーラを立上げ検索をかける。綺麗にフォルダーに分類している人もいるが、そうでない人も多いだろう。しかも、そのような情報交換を担う人はノートPCで飛び回ることが多くなっている。つまり、マシンごと情報全てを失う危険性も増している。
やりたかったことは、FileMaker(FM)で実現可能だ。POP3への対応はプラグインが可能にしてくれる。メールで送った情報がそのままDBに格納され、コンパニオン経由でWeb共有できる。しかもマルチOS。DBとアクセス用のHTMLを幾つか用意すれば、そのまま配布できる。FMには試用版(1ヶ月使用期限)もあるので、無料で拡散することもできる。
但し、FMには問題がある。ファイルのアップロードをサポートしていない。これさえあれば、本当に簡易的であろうが"ポータル"が作れると思っている。幾つか試作したが、ここだけColdFusionを使うとかして対応した。機能は実現できるが、コスト的OS的に要件を満たせなくなってきた。勿論、mailで対応することは可能だ。添付ファイルとしてDBに送りつければ良い。例えば、POP3itは、同じファイル名で添付しても添え字をして上書きしないで保存してくれる。
昔話ばかりして申し訳ないが、DECでの開発プロジェクトのリーダの最初の仕事は、実は電子会議室を開くことだった。VAXnotesという簡素でありつつも優れた会議室システムがVMSにはついていた。最初の10トピック(スレッド)程度を議長がリザーブして、キット情報やコンタクトパーソン等のアクセスした(興味があるという意味)人なら誰もが知りたいと思う情報を最初に並べた。後は質問に答えたり、アナウンスをしたりする。DEC社内である製品の情報が知りたければ、そのアドレスを教えれば良いだけになっていた。サポート系の人がお客様からの電話を片手に見ることもあったし、教育部の方が休み時間に教室から飛んできてヒヤヒヤの検索をしたりもした。
しかし、この効果や意味は、単なる情報共有だけではなかった。エンジニア時代、先輩から口すっぱく言われたのは、「手離れの良い開発をしなさい」ということだった。製品開発中のテンションの高さは、後で見たときには自分でも驚く程高いものだ。その中では、Tipsと呼べるものから、テスト方法、デバッグ方法、どうしようもない時の回避策..様々な情報が書かれてある。後で、マニュアルを作るのとは少し違った勢いで情報が記述される。確かにそのままではお客様には出せない文面もあるが、開発中に自分の知っている情報は全てそこに書くと言わんばかりの想いで、その会議室をマネージする。その結果、自分がそのプロジェクトから離れても、どんな情報がそこにあるかは自分か若しくはその参加者が知っていてくれる(詳細情報ではなく、そこに行けばあるという情報が大切)。人間インデックスである。開発が終了し、出荷される。その後少しの片づけをしたら、基本的には完璧に「手が離れる」ということが実現する。その最大の効果は、皮肉にもDECが傾き始めて大量に人材が流失した時に、思い知ることになるのだが...。
Webサイトの開発には、言った言わない論争が跡を絶たない。そのためにはできる限り形(データ)として残るmailでコミュニケーションを選ぶ。でもそのおかげでその情報の管理が発生する。それをDBにやらせたい。何年も経ってから、あの頃の情報を知りたいんだけど..とか間の抜けた質問をする輩もいる。人に尋ねる前にキーを叩け、と言える環境を作りたい。しかもを楽して。現時点ではmailのコピーを取るのが一番だと思っている。
しかし冷静に考えると、これは単なるWebMailかもしれない。もっと高度なリンクを考慮すれば、(次世代の)グループウェアかもしれないし、真のポータルかもしれない。夢は広がるが、Ridualというプロジェクトの中では、ここまで手を出すことは難しい状況になってきた。せめてアイデアだけでも記しておこう。
以上。/mitsui
参考:- ファイルメーカー: http://www.filemaker.co.jp
- POP3it: http://www.pop3it.com
- FMで商用ウェブサイトを構築する(ZDnet編):
http://www.zdnet.co.jp/macwire/0208/26/hj00_filemaker.html
ps.
FMでの限界を感じるのであれば、4th Dimension(4D)という手もある。少し敷居は高くなるが、POP3対応もuploadも基本構成で達成できそう。
- 4th Dimension :http://www.4d-japan.com/