サイト開発をする際、勿論競合サイトや直接は接点がなくても参考になるサイトにはお邪魔する。色々とページを繰りながら、感心したり、イライラしたり、勝てるなぁと自惚れたり。時には、こりゃ勝てんわ、と思うことも。
それでも、そのサイト観察のレポートを書けと言われて、大抵困る。全体印象として、どんなモノかは頭に入った。これから作るべきサイトのイメージも大体出来上がった。でも文字にしにくい。漠然としたイメージが、ただ漠然と頭の中にある。ただし、開発が成功するとき、それはその漠としたイメージからズレないで進めたときだと思っている。
それは単に文字化能力や説明能力の欠如しているだけかもしれないが、自分が訪れたサイトの記憶の仕方に鍵があるように思う。皆でサイト評論会を開くとき、その名やURLを聞いただけで、頭の中にその漠としたイメージが広がる。具体的な像ではなく、どちらかと言うと色のような感じ。色の名前を言いはしないが、同じ触覚を持っている人と話すとき、その受け取った色合いの誤差が少ない気がする。
でも、そんな曖昧な感覚レポートを提出する訳にはいかない。このサイトは○○色です、と言っても意味がない。だから比較しやすい項目を探す。全体から受ける印象は、派手か、地味か、サイバーか、クラシックか。できるだけ提出先の語感と同じになるように苦労しながら。
それでも、自分が相手だとして、自分が提出した資料だけを見て、そのサイトを訪れていない時に、厳密に言えばスナップショットも見ないうちから、正しい意識合わせができるかと言うと自信がない。正直いって、URLを明記する以上、こちらのコメントを参考にしながら訪れてくれることを期待している。
先日Ridualを使いながら、また新たな発見をした。競合サイト分析。自動ダウンロードを先に使っても、最初から手で書いても良いのだが、サイト全体の印象をあのインターフェースで結構忠実に描けることに気がついた。
手で描く場合、入り口のページから順々にリンクで飛ばされるたびに画面上にページを置く。置いたら、参照しているページのタイトルを入力する。ただそれを繰り返す。ただただ単純作業だ。しかし、自分の印象をそのページの大きさや色で記録できる。印象深いページや手のこんだページは自然と大きくなる。そして全体あるいはそれなりの数を見渡したあと、見栄えを調整するために、再度そのサイズ調整を行う。これよりもそっちを大きくしよう。その時に、不思議と最初に見た印象と、その後に見たページとの間で色々と比較を行っている。
出来上がった画面は、基本的に情報の経路だけが浮き彫りになっている。記述の際にディレクトリ構造も意識しながら書き写すと、開発者の意図も見える。ここでメンテナンスを考えている。ここはどうも後から突貫工事で作ったみたいだ。ファイル名にしてもそれなりに分かり易さをベースにしているので、推測できるものが多い。SVGで出力して、Illustratorで開く、ヘッダーとフッターを加え、Ridualでは行いにくい微調整を加える。資料が出来上がる。
コストを考えると、ここまで丸々外注することも可能だ。差別する訳ではないがバイト君でも一向に構わない。サイト全体を見渡せと言われたら時間を考えて億劫になっても、概略図的地図が渡されたら、見るべきものが分かる分だけ進みやすい。迷いそうな所が見えている分だけ、イラつかない。
サイトによっては人間不要でここまで可能だ。ドメインが複数に分かれていないことや動的部分がそれなりに解析できるという条件で、ダウンローダが使える。URLを入力してリーターンを押したらそのままほったらかし。それなりの時間をかければ一生懸命ページをダウンロードしてくれる。後は、インポートしアナライズ。サイトマップもサイトレポートも出来上がる。あとはローカルに落としたページを辿って、ゾーンパネルで印象に従って大きさや色という重みを付けていく。ページ数が多くても、マシンスペックが高ければそれなりに快適で、鼻歌交じりの作業だ。
再構築するサイトの話を聞き、その競合サイトを幾つか選んで、二~三人で半日。A3シートが数枚。同業種のサイト構成図が出来上がっている。しかもそれなりに綺麗に。少し手を加えるだけで、そのままクライアントに出しても良いものもある。
まだ再構築プランを出す話なので、自作のページはひとつもない。かなり冷静に構造比較ができる。冷静な分、こんなのありかなぁ、あんなのは...。アイデアも出る(こともある)。
Ridualが生成するサイト構成図はどれも、ノッペラボウなので、グラフィックの趣味も混じらない。情報の流れに集中して考えることができた。以前、表現力がないと話したが、制限もまんざら悪くない。できることが決まっているから、その中で工夫する。
出来上がったサイト構成図も眺めながら、こういったモノが私なりのサイトの印象だったんだろうかと改めて思う。実はこうして考えていたんだろうかと。自分の頭の中を見ているようで、面白くもあり、恥ずかしい気もする。そして、この図は後々まで、ディスクがクラッシュするまで残る。適切な場所に置けば、今後色々な人に見られていく情報に成る。なんだか緊張する。
開発者が言うのも変だか、Ridualは奥が深い。エンジニア系の会社にいるとどうしても解析系にスポットが当たるが、どうして立派に上流系でも役に立つ。
しかももう一つ効用を確信した。ただサイトを描きなぞるだけの作業をしても、作業者はそれなりの意見を持てる。何が不便で何が便利か。バイト君に頼んでも、そのバイト君はその作業が終わった時点で、何らかの意見を持てる可能性が高い。大きさと色だけのパラメータしかないが、そこには意図があるから変更されている。その意図を聞いてみると興味深い。記録する方法が与えられれば、その記録を工夫するのが人間だ。これは、サイトの構造を考えるという訓練と呼べるかもしれない。
同じ字を何度も何度も書かされて、遂に嫌いになってしまった習字を思い出す。あのまま文句を言わず書き続けたなら、私でも何かを見つけたかもしれない。いつかRidualの書記係りのバイト君が、とんでもないインフォメーションアーキテクトになっているかもしれない。ワクワクしてきた。
以上。/mitsui