今現在、私が担当している業務は大きく分類して二つ。RidualとFlash。Ridualから見て、Flashは三つの意味を持つ。1つは、解析対象。次にRidualが将来的に吐き出すアウトプットへの期待、そして最後が予算的な問題。
Ridualは、まだVer.1(V1)の販売にも至っていないのに、私の頭にはV5位の姿がおぼろげながらある。RidualはデータフォーマットとしてXMLを採用している。ここにFlashとの接点がある。FlashはXMLファイルを読める。Ridualでサイトの論理構造を描き、適切なXMLを生成すれば、Flashが汎用的なメニュー部分を担ってくれる、美しいインターフェースで。これがV2かV3辺りに実現したい夢。
Ridualはまだ販売していない。販売しない限り利益は出ない。ただR&D的に進めていけるほど会社は甘くない。何かしら収益性のある仕事をやるという条件でRidualプロジェクトが成立している。Flashの勉強をしながら、提案例を考え、システムインテグレータ(SIer)っぽいパフォーマンスデータを取る。同時にRidualでの解析サンプルを作成する。Flashが無視できないほど活用されているからこそ、何かと上手くかみ合った形で進んでいる、時間が足りないことを除いて。
Flashに絞ったカンファレンスが開かれて、何故かそこでお話させていただくことになった。様々な不思議な縁が重なり合い、声をかけて頂けた。なんとRidualの初期の姿を知る人までが、絡んでいる。狭い世界だとは言え、やはり不思議な気がする。
さて、そのFlashである。Ridualと離れた部分での何をやろうとしているかと言うと、Webアプリケーションのユーザインターフェース(UI)としての活用がテーマだ。アニメーションツールとしての側面は余り考えていない。純粋にWebアプリのUIに絞った活動をしている。
従来のFlashファン(最近はFlsherというそうだが)からは嫌われそうな活動である。そんなのFlashじゃないと言われる。Flashをツマラナイものに使うな、とも言われる。でも、正直言って、Flashをいわゆるデザイナに独占させるには勿体無い、エンジニアにも使わせろ、というのが出発点。
Flashとの出会いは、まだFutureWave社の製品だった頃に遡る。GIFのファイルサイズをどこまで落とせるかが、優れたWebデザイナであると言われてた時代である。あの時の衝撃は忘れない。ベクトル系のWebグラフィック。とにかく軽くて美しい。「蟹さん」マークの箱を買い、通常ソフトの箱には執着しないのだが、あの箱は暫く手元に置いておいた。
そして、段々と進化していく姿を眺めていた。生業としている業態が余りFlashを許してくれなかった。だから仕事で使う機会が殆どない期間が続く。でも、機会があればFlash関係のセミナーなどには顔を出し、余り離れないように努めた。
Webを眺めていても、いつも驚かされるのはFlashだった。カンヌかどこかで最初のWeb系の賞をとったサイトも、Flashだった。マウスに反応するUIを飽きることなく見つめていた。中村勇吾氏のサイトを知ったときも、ため息をつきながらいじっていた。そして、氏のサイトで1つの「教え」に出会った。
それはマウスを動かすことで、画面上に規則的に並べられたポイントを中心に円が拡大縮小するものだった。マウスとそのポイントとの距離に反比例して円の半径が計算される仕組みだ。マウスを近づけた点の回りが大きくなり、離れるに従って小さくされる。
当時、私の悩みは有り余る文字情報を載せるスペースがHTMLには少ないという問題だった。文字ばかりを並べても読んではもらえない。読みやすい工夫は必要だ。その必須項目にマージンとか行間とかの空白のスペースがあった。それを十分にとると、結果として一ページの画面サイズが縦長になり、下のほうのモノは読んでもらえない。袋小路状態。煽るようなコピーで次画面に誘導するようなことで急場をしのいだ記憶がある。少し後ろめたさを感じつつ。
Flashは、普段は小さくしておいて、マウスによって見たいと意思表示された領域を拡大して見せれば良いじゃないか、と教えてくれた。俯瞰(一望)性と詳細表示の両立。目から鱗だった。小さな画面が無限の広がりをもって見えた。更にノーリフレッシュサイトとマクロメディアが呼ぶ「作り」を見て、タブなどの部品を配することで、一つの画面が幾らでも増殖できることを目の当たりにする。惹き付けられた。
これで仕事がしたい、と感じた。FORMタグを駆使して作り上げた情報のやり取り画面の次の世代。ユーザが入力すべきことをアプリが拡大して促してくれる業務アプリの時代。別に人工知能が必要なわけじゃない。どのデータの次にどのデータが入力されるべきかを決めておけば良いだけである。いつも山ほどのテキストボックスを見せられて、前例を探し、セクレタリーに記述例を教えてもらう時代からの脱却。初めてそのフォームに触れる人が、迷わず入力できる世界。Flashがその道を見せてくれている。
しかも、Flash Remotingがデータ転送量を減らしてくれている。アクセス数を伸ばしたい、けれど伸びればサーバ負荷が増えてスケールアップする必要がある、そんなジレンマへの福音だ。Flash Remotingの資料には、JavaだのWebサービスなど、SIerなら放っておけないだろう、と言わんばかりの言葉が並んでいる。エンジニアへの挑戦とも感じている。
そしてもう一つの想いが膨らむ。これまで、SIerに所属する身から言えば、エンジニアとデザイナの共存協労という観点から見たならば、Webサイト構築は失敗の歴史だったと思っている。しかし時代が変わってきている。動けばよい、機能すればよいという時代が終わろうとしている。いかに気持ちよく使ってもらえるかが「機能」と見られるようになって来ている。エンジニアとデザイナが不仲で良かった時代は終わる。そんなマネージメントをしている企業自体が姿を消すからである。Flashはその引き金だ。
データベースから情報を引き出してくるノウハウ、それに価値がある時代。そのノウハウが多数のエンジニア層が故に一般化した情報になっていく。こなれた技術と呼ばれる時代。誰が作っても同じ性能が出せるようになる時代。その中で差別化していくにはどうするのか。デザインである。見た目のデザインだけではない。使い勝手の設計(デザイン)が最大の差別化のポイントになる。あそこに作らせると何か使い易いんだなぁ、そう言わせるノウハウこそが益々重要になってくる。勿論それが全てFlashの縄張りではない。適材適所。HTMLの方が適している場面もまだまだある。その切り分けも重要なノウハウだ。
XMLだ、Webサービスだ、.NETだ、とエンジニアサイドだけがWeb界を引っ張っていっている感じがする。でも、どっこいUIやユーザビリティは健在だ。かえってやるべき事が山積みだ。サーバ側しか見てこなかったSIerには、大きな波が襲ってくる。間違いなく。うかうかしていられない。
以上。/mitsui
ps.
現在、V1で作成できるPIP(Project Information Portal)の試作を公開中です。Windowsユーザ限定ですが、この「X-map」のボタンで表示される、サイトマップを、IE6で全て選択してEXCELにコピーペーストして見てください。ちょっとしたドキュメントが出来上がります。お試しあれ。