中二の息子と格闘している。問題は成績ではない。熱意。何だか、何をやっても、頑張っているという状態に見えない。見ていてイライラする。余り話す時間が取れないのだが、機会があれば活かすようにしている。でもイライラする。
私はフリーターの時代があったので、幼稚園の送り迎えを担当もして、それなりに息子とは距離が近いつもりで居る。今も、一緒に居る時間こそ短いけれど、それなり以上に関係作りには頑張ってる。でも、ここに来て壁に当たった。
何かの作り方、何かの描き方、何かについての知識、それらは何とか教えることができる。正確に書くと、一緒に調べ学ぶことができる(小学校高学年になると、もはや覚えていないことが多い)。でも、教えられないことがある。熱意。「頑張る」ことを教えられない。
何であっても、「そこそこ」で良いと思っている。汗だくになることを恥じているかのような素振りを見せる。すかした態度が格好良いと思っているフシもある。身長で直ぐそこまで迫っている息子が、そんな態度で居ることがイライラの種である。
数年前、頑張ることについて話し合ったことがある。なぜ頑張らないのかという問いに、「頑張って駄目だったら、損じゃないか」が答え。頑張る前から結果を考えている姿が、私よりもオジン臭く見えて、説教してしまった。勿論、ノレンに腕押し、焼け石に水だった。話して通じるならとっくに解決している。
■
「日経エレクトロニクス 2005.04.11号」に興味深い記事が載っている。「技術者よ大志を抱け 第2部 組織・制度は脇役に徹す 成果主義の見直し始まる」。記事は先立って行われたアンケートをベースにしている。画期的な技術や製品を開発するのに必要な事柄を問うもので、ハードウェア系開発者約二千人が有効回答を寄せている。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSHI_LEAF/20050406/103453/
(日経BP社「Tech-On!」)
「画期的な開発を進める意欲を高める上で一番大きな要素は何か」。「やりがい・達成感=76%」、「特許報酬や成果報酬など金銭的な見返り=13%」、「役職・出世=2%」。
「組織が画期的な開発を成功させるために必要と思われる要素(与えられた言葉に対する重要度を5点満点で答える)」。「技術者の熱意=4.7」、「明確な目標設定やビジョン=4.4」、「強力なリーダーシップ=4.2」、「優秀な技術者=4.0」、「的確な市場予測や技術予測=3.8」、「十分な開発期間=3.5」。
社員のやる気を引き出すための制度や組織が、逆に足を引っ張っている現状と、とは言っても何らかの明文化をせざるを得ない会社としての立場のジレンマが、各社の試行錯誤の取材とあいまって、様々な示唆を与えてくれる。
そして、間違いなく主張されているのは、「熱意を育てるのは難しい」という点だろう。様々な趣向を凝らした制度を見ながら、どんな大企業でさえ苦労していることに、申し訳ないがホッとしてしまう。我が家と同じだ、と。
同時に、「制度に適合できるのが良い社員」だった時代が過去になり、「人に合わせられる柔軟なものが良い制度」の時代に入っているのを感じる。本来の主客の順序になって来つつある。Webがユーザ中心に設計すべきだという流れと、時を同じくして移っていっているのが興味深い。
そして、どんなに巧妙なルールであろうと、廻り中を熱くさせる人間には敵わないと思ってしまう。たった一言で、その場を沸かしたり、和ませたり、熱く団結させたりしてしまう。改めて、人間という存在の大きさを実感する。
■
人を熱くさせるもの、それは何だろう。やはり、その対象がどれほど好きか、にかかっているのだと思う。イヤイヤやっていても、ホドホドにやっていても、熱は伝わるほどにはならないだろう。
息子に熱を感じないのは、彼がまだ夢中になれるものに出会っていないからだ。少し可哀想に思う。親として、もっと上手く演出して上げれれば良かったと後悔もする。早く出会えることを願っている。
なりふり構わず、夢中になれるものに夢中になること。暑苦しいと邪険にされながらも、心が片時も離れられない事柄に出会うこと。それが仕事ならば、ある意味で、これ以上幸せなことはないのかもしれない。
今、Ridualチームは、そういう意味で至福のときにある。Ver.2が着々と姿を見せつつある。未だに、遠隔地開発(横浜と四国)をしているので、各人がどんな表情で新しいインターフェースを見つめているのかは分からないが、見飽きることがない。
私はうっとりと真夜中に一人で見つめ、いじっては悦に入っている。隣のメンバーは昼間に真顔で「いいなぁ、これ」と呟いている。皆んな、そろいも揃って、Ridual馬鹿である。自分達で設計し、自分達で作って、先ず自分達が惚れ込んで、自分達で粗探しして、シェイプアップしていく。
まだ事業計画もできていないし、Ver.1の投資も回収できていない。客観的に見れば不安定この上ないけれど、期待で胸が躍っている。Webに関わり続けて良かった。
■
マザーテレサは、「愛の反対は、無関心です」と言った。憎むとか積極的な行為が、愛の対極にあるのではない。存在を知りつつ無視する、それが「愛が無い」状態なのだと言う。
ユーザが居ることを知りつつ無視することも、もっとより良いナビゲーションがありそうなのに考えないことも。どれも、愛とは反対の方向を向いたものなのだろう。
Ridual購入者からのリクエストや質問に対応するように、Webサイトを少々変更した。改めて、初めての方への配慮の足りなさを認識する。愛が足りなかったことを認識する。修正した途端にアクセス数が増える。皆んな、迷ってたんだろうか。へこみつつ、反省している。
Ver.2では、そんなことの無いようにしなければ。もっともっと練って行こう。そして、スクリーンショットだけでも早めに公開して、意見を頂ければと思い始めている。独り善がりではない形でのりリースを目指したい。愛だけでも、熱意だけでも、やはり足りない。知恵も磨かなければ。
以上。/mitsui
ps.
- 息子の名誉のために一言。すこし誇張しています:-)
- ここでも一度ご紹介した、「あみちゃん」の最新情報。手術成功!
http://ami.heart.mepage.jp/new.htm - 友人のお子さんが今大腸除去という瀬戸際に居る。こちらはお金の問題以前に、世界的にも例の無い手術になるという技術の問題が絡んでいる。痛みに耐える彼の姿に、胸が痛くなる。できることは本当に祈るだけ。