RIAコンソーシアム(RIAC)は、年に3~4回の100名単位のセミナーをなんとか自力で開催できるように育ってきた。発足から約6年。私は発足の数ヶ月遅れて参加したけれど、それなりに中心的な活動をしてきた。浮き沈みの激しいIT用語の中で、6年以上前の「RIA(Rich Internet Application)」という言葉が、未だにメディアで取り上げられるのは、このコンソーシアムの動きと無関係とは言えないと思う。
そして第14回のセミナー。最初の頃は違うセミナー名を使っていたので、実際の回数とは微妙に異なる。今回は秋葉原、初めての場所。テーマは「事例」。ここ数回技術系とデザイン系の制作現場という観点でテーマ探しをしてきたが、もう少し発注するクライアントさんも交えた話しを共有したいというのが、きっかけだった。
▼RIAコンソーシアム:RIAコンソーシアム・ビジネスセミナーXIVRIACの事務局長から出たアイデアは、「事例」。RIAC会員の開発した事例をタイムリーに見せて、更に開発苦労話をシンクロさせれば、それだけで価値がある。そう考えて、会員宛に事例募集を呼びかけた。いつもはテーマを絞れても、そこに登壇してくれる方を探すのが一苦労。でも今回は、今までの苦労が嘘のように、短時間に候補が挙がる。
http://www.ria-jp.org/information/20091201.html
詳細調整は、いつもと変わらない。壇上に立つ方の何人かには、実際に出向いてお願いする。mailだけで済ませられるとは思っていない。壇上に立つ前に、意図を説明し、何を話して欲しいかを伝える。会いましょうと言ってくれた方で、話がかみ合わなかったことは殆どない。単なる企業宣伝の場と思っていた方も殆どいない。自分達の苦労をシェアし、同じ轍は踏まないようにしましょうね、と語ってくれる。
実は今回は更に難しいお願いを加えた。「数字」が欲しい、と。昨今の提案は、見栄えとかユーザビリティの正論などで、納得してもらえるケースは余りない。効果を数字の形で見たいと希望される。経済状況からも、理論や高揚した気分でプロジェクトが開始されることは減ってきた。そうした状況を踏まえて、折角クライアントさんが直接語って頂けるのであれば、何を目論んでプロジェクトが生まれ、育ち、測定し、軌道修正し、どこを目指しているのかを聞きたかった。
交渉をしながら書いた案内文は下記の通り(抜粋)。「事例」が中心なのに、担当者にも焦点があたっている。
RIA(Rich Internet Application)という言葉も広く市場に浸透し、RIA技術の進歩も開発環境の整備も進んでいます。同時に多くの視点がそうした技術寄りになりつつあるようにも感じます。しかしながら、何故RIA化するのか、何故ユーザビリティ向上を目指すのかというテーマが、今後のビジネスの根幹になっていることは忘れてはなりません。
今回のRIACビジネスセミナーでは、その本質的な部分や実際の想いや苦労した点などをお話しして頂けるように、実際にきちんとユーザに目を向けビジネスを展開している担当者様にお集まり頂きました。
業界も技術も異なってはいますが、訪れてくれるユーザのことをどのように考え、どのようにもてなすのか。あるいは業務アプリであれば、どこまで自然に操作ができて、作業に集中できるか。そうしたビジネスの原点に関わる努力と技術とがどのように融合して、実際にサービ スやWebサイトが成立しているのかのヒントをご一緒に覗いてみたいと思っています。
技術によってのみ成り立つものでもなく、見栄えだけの整備で辿り着 けるものでもない領域。対象ユーザを大切にするという路線の先にあ る苦労と喜びを、そのプロジェクトの担当者の生の声で共有できる場 を目指します。それが業種業界を越えて、皆様のビジネスにとって、 良いヒントとなり得ることを期待しております。
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熱い語りを期待した。そしてまさにそうだった。4セッションある中で、配布資料があったのは1つだけ。他は、センシティブな話をするので、資料配布は遠慮させてくれと逆に頼まれた。日頃見れない数字がスクリーンに現れる。多分私が感知できる以上の意味や価値が、そこに存在している気がする。そこに辿り着けない自分が悔しいけれど、その場にいることが嬉しい。
移動/旅行系、物流系、住宅(通常生涯最高額の買い物)系、保険系。ECサイトなどの分かりやすいWebアプリケーションではない。でも、通常の生活の中に普通に存在する。B2Cプロジェクトが3、B2Bが1。Flashが3、Biz/Browserが1。様々な分類軸はあるけれど、リアルな生活感が香ってくる。ネットが一般的になってきていることを、改めて再確認する。
「トコトンこだわろうと決めた」「○○のシェアがここまで来たら、これを仕掛けると決めていた」「エンドユーザである現場からの不満はゼロ」「要件定義の時点から現場が参加している」「トータルなサービス提供をしていかないと、エンドユーザのためにもならない」「間違いを認め、方針転換すると決めた」「エンドユーザに、こう理解してもらいたいんです」。出来上がったモノを目の前にしたら、当たり前で単なる正論にしか見えないかもしれないけれど、作っている最中にこれらの軸足をぶらさないで作り上げたことの大変さが頭の中を巡りだす。
私は司会をやっていたので、舞台の真横のソデにいて、それらの熱弁を見つめていた。思わず目頭が熱くなってきた。本当に涙腺がきしみ始める。原点に立ち返るという視点で、既存のプロジェクト、しかも成功しているプロジェクトを見返すと、まさにその原点から離れずに進んでいるのだ。しかも収支感覚は厳しくなっているけれど、熱い夢を語っている。勝手に諦めてみていた部分があったのかもしれない、思ってた以上に、クライアントはユーザを見つめている。先の先まで読んでいる。それがビンビン伝わってきた。
なんだ、未だ未だ道は広く遠く明るいじゃないか。この道を進んできて間違ってなんかいない、このまま突き進めばいいんだ、と背中を押される感じすらした。「あれば便利」から「ないと不便」に育った情報インフラ。その中で、開発者もクライアントもベンダーも試行錯誤を経ながら、確実にワンステップ登ったんだと感じる。そして更にステップは続いている。
「ないと不便」から「ないと全然だめ」、そして「あってあたりまえ」へ。そして、その中で更に競争があり技術革新が後押しし、汗も涙も織り交ぜながら次の時代が姿を現していくのだろう。期待を確信に変えてくれる場だった。関われたことに感謝。いつもそうなんだけれど、熱いプレゼンテータが凄かった。心から感謝。
以上。/mitsui