諸般の事情で、公開が遅れている映画「ふうけもん」。見たいと思っていたら、幸運にも機会を得た。
中村雅俊主演、浅野ゆう子、竹中直人、笹野高史、中村玉緒、哀川翔、…とにかくキャストが贅沢。そして監督が「釣りバカ日誌」の栗山富夫。でも、夜逃げ屋本舗でも、俺たちの旅路でも、釣りバカ日誌でもない。全然違う。ほのぼのともしていないし、熱血でもない。でも暖かい。母性の愛より、父性の愛か。
邦画にありがちな説明過多でもなく、むしろ少ないくらい。キリスト教が根底にあるけれど、全然説教臭くない。豪華キャストをつまんなく使うこともない。皆が味を良い味を出している。しみだす味が鍋料理のように心を温める。
人の人生は楽ではない。辛いことも多い。できないことも多い。やれることは少ないようにも見える。でも何かある。そして何かを橋渡しするのは自分だけではないかもしれない。支えあえる心地よさ。そしてそのしなやかな強さ。
2時間は尺としては長いと思う、でも終わった時、もっと人生のように続いてほしかったと思った。それぞれの人生が、これからどのように続くのか見たい、寄り添いたいと思えた。そして、映画館を出た時に、何か温かい贈り物をもらった気になれた。
2014年の公開を目指して、プロデューサの頑張りは続いているみたい。このままオクラ入りするには、もったいなさ過ぎる佳作。話題になってほしい。